労働判例コラム⑤(学校法人南山学園事件、甲研究所事件、新日本建設運輸事件)

労働判例コラム⑤(学校法人南山学園事件、甲研究所事件、新日本建設運輸事件)

2020/04/17 労働判例

労働経済判例速報2019.11.10

【定年後再雇用の拒否に関し労働契約法19条2号類推適用による雇用の契約上の地位確認請求が認められた例】⇒名古屋地裁令和元年7月30日判決〈学校法人南山学園事件〉

第1 事案の概要

 原告(以下、「X」とする。)は、被告(以下、「Y」とする。)が設置する大学(以下、「本件大学」とする。)に教授として勤めていたが、平成29年3月31日をもって定年を迎えたため、再雇用を求める意思表示をしたところ、Yは、Xが懲戒処分を受けたことがあることを理由としてこれを拒否した。そこで、Xは、本件拒否は、正当な理由を欠き無効であり、Yとの再雇用契約は成立しているとして、雇用契約上の地位の確認及び平成29年4月以降の月額賃金の支払いを求めるとともに、無効な懲戒処分・再雇用の拒否によって精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づく慰謝料請求をしたという事案。

 なお、本件におけるXの懲戒対象事実は、㋐他の教授(以下、「A」とする。)が、その指導する大学院生にハラスメント行為をしていることを知り、Aが別に指導する研修生に対して、その情報を明らかにしたうえで、ハラスメントを受けた事実がないか調査したこと、㋑緊急の臨時専攻会議を開催することなどを予告し、多数の者に正式決定前にAの懲戒に関する情報を知らしめたこと、㋒Aの懲戒案件を扱う専攻会議の運営の適切性やAと婚姻関係にある教授(以下、「B」とする。)の会議出席の権利に十分な配慮をせず、他の教員とは異なる取り扱いをし、他の教員と同じタイミングで専攻会議の開催案内をしなかったことである。

第2 主な争点

 主な争点としては、本件Xの行為が、①懲戒事由に該当するか、懲戒事由に該当するとして、②懲戒処分の相当性は認められるか、③定年後再雇用の黙示の合意の有無である。

第3 裁判所の判断

1 ① 懲戒事由該当性について

 ⑴ まず、懲戒対象事実㋐について、Yの就業規則123条7号「重大な秘密を外部に漏らした場合」に当たるかが問題となり、Aのハラスメントに関する情報は、「重要な情報」に当たるが、Xが情報を与えた相手である研修生はAのハラスメントに関しては既に知っており、「漏らした」には当たらない。仮に「漏らした」に該当するとしても、研修生に対してハラスメント行為を受けていないかを確認することには正当な理由があるため、懲戒対象事実㋐は、懲戒事由に該当しない。

 また、懲戒対象事実㋑についても、Xは会議をするうえで必要な連絡をしただけであり、懲戒処分の具体的な内容については知らせていないことからすると、「重大な秘密を外部に漏らした」とは言えず、仮に言えたとしても、正当な理由がある。そのため、本件懲戒対象事実㋑も懲戒事由には該当しない。

 ⑵ 懲戒対象事実㋒については、就業規則123条9号の「服務規律に違反する行為」に該当するかが問題となる。Xには、専攻会議の運営について、専攻主任としての裁量が認められているため、Bに著しい不利益が及んだり、不当な目的に基づいて異なる取り扱いをしたというような裁量の逸脱濫用が認められる場合にのみ、「服務規律に違反する行為」に該当する。しかし、本件でXは、Bについて他と異なる対応をしてはいるものの、一定の配慮はしていることからすると、裁量の逸脱濫用は認められず、懲戒対象事実㋒も、懲戒事由には該当しない。

 ⑶ 以上より、本件において、Xには懲戒事由がないのであるから、Xに対する本件譴責処分は無効である。

2 ② 懲戒処分の相当性について

 仮に、Xの上記懲戒対象事実が懲戒事由に該当するとしても、Xと同様にBについて、他と異なる取り扱いをしていたC研究科長については特に何らの処分もないこととの均衡、及びXは上記懲戒対象行為について反省の態度を示していることに照らすと、情状酌量の余地もあり、訓戒にとどめるのが相当であったといえる。確かに譴責は書面において顛末及び反省を示す処分ではあるが、再雇用の欠格事由に該当することからすると、直ちに軽い処分とは言えない。

 そうすると、仮にXの本件懲戒対象事実が懲戒事由に該当するとしても、本件処分は懲戒事由との均衡を欠いた不相当なものといえる。

3 ③ 定年後再雇用の黙示の合意の有無について

 ⑴ この点については、労働者において定年時、定年後も再雇用契約を新たに締結することで雇用が継続されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合、使用者において再雇用基準を満たしていないものとして再雇用をすることなく定年により労働者の雇用が終了したものとすることは、他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情がない限り、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、この場合、使用者と労働者との間に、定年後も就業規則等に定めのある再雇用規定に基づき再雇用されたのと同様の再雇用関係が存続しているものとみるのが相当である(労働契約法19条2号類推適用・参考判例①。)。

 ⑵ 本件大学では、定年時に再雇用を希望すれば基本的に再雇用されること、Xが専攻主任という役職にあったことに鑑みれば、本件処分があったとはいえ、Xには、定年時、再雇用契約を締結し、満68歳の属する年度末まで雇用が継続すると期待することが合理的であると認められる。さらに、上記のように本件処分は無効であることからすると、本件で再雇用を拒否した理由は存在しないことになるため、本件再雇用の拒否は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。

 したがって、YとXとの間には、定年後も再任用規定に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当である。

第4 結語

 以上からすると、原告の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び、本件再雇用拒否後、定年年齢時の俸給の限度での賃金請求には、理由がある。なお、本件では、学生への指導が中途半端になったことや研究に支障が出たことなど、未払い賃金の経済的損害の填補によっても償えない特段の精神的苦痛が生じているから、慰謝料については50万円の限度で理由がある。

〈参考判例〉

最高裁平成24年11月29日判決(民集242号51頁。「津田電気計器事件」)

〈参考法令〉

・労働契約法19条(有期労働契約の更新等)
 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当する者の契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申し込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申し込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
 一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
 二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて、合理的な理由があるものであると認められること。
・高齢者雇用安定法9条(高年齢者雇用確保措置)
1 定年(六十五歳未満の者に限る。以下、この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
  一 当該定年の引き上げ
  二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下、同じ。)の導入
  三 当該定年の定めの廃止
2 継続雇用制度には、事業主が、特殊関係事業主(当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊の関係のある事業主として厚生労働省令で定める事業主をいう。以下この項において同じ。)との間で、当該事業主の雇用する高年齢者であってその定年後に雇用されることを希望するものをその定年後に当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結し、当該契約に基づき当該高年齢者の雇用を確保する制度が含まれるものとする。
3 厚生労働大臣は、第一項の事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用(心身の故障のため業務の遂行に堪えない等の継続雇用制度における取扱いを含む。)に関する指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
4 第六条第三項及び第四項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。

【うつ病発症に関する安全配慮義務違反について総額3472万円余の請求が認容された例】⇒札幌地裁平成31年3月25日判決〈甲研究所事件〉

第1 事案の概要

 被告会社(以下、「Y1」という。)に雇用されている原告(以下、「X」という。)が、平成18年1月20日、うつ病を発症した(以下、「本件発症」という。)。Xは、本件発症が、Y1における過重労働が原因であり、Y1には安全配慮義務違反があるとして雇用契約上の債務不履行等に基づく損害賠償の一部請求として8271万8752円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた。

第2 主な争点

 主な争点としては、①Xのうつ病とY1における業務との因果関係、②Y1によるXに対する不法行為の成否、③損害額である。

第3 裁判所の判断

1 ①について

 ⑴ 裁判所は、争点①について、札幌中央労働基準監督署の厚生労働事務官の調査(以下、「本件調査」という。)をもとに、本件発症について業務起因性を認定している。

 すなわち、まず、本件調査では、Xの業務量について、タイムカードの記録を算定の基礎とし、平成17年7月と10月の労働時間を比較し、10月は時間外労働時間が100時間を超えていることに加え、8月の倍以上に勤務していることから時間外労働が大幅に増加したと認定され、この労働時間の増加が、「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」に該当するとして、心理的負荷の強度が「強」に該当するとした。  

 また、同僚とのトラブルについて、その存在は認めつつも、客観的にはトラブルといえないとして心理的負荷の強度を「弱」とした。

 さらに、上司とのトラブルについては、業務をめぐる方針等において上司との考え方の相違が生じたことまでは認定したが、心理的負荷の強度は「弱」に該当するとした。

 本件調査は、以上の事情及び、Xの主治医の意見書等を合わせて検討し、Xの心理的負荷は「強」に該当すると認定した。

 ⑵ 裁判所は、本件調査の信用性が十分に認められると判断した上、Xの労働時間の増加具合からして、労働時間の増加の原因はXの業務態度だけの問題ではないとして、本件発症における業務起因性について肯定した。

2 ②について

 本件でXがY1の不法行為として主張する事情のうち、Y1がXの給料をXの同意なく半額に減少させた事実、Y1がXに対して退職を迫った事実を認定した。しかし、同意のない減給がXのうつ病を悪化させたとは事実関係及び証拠上明らかではないとして、裁判所は、Y1の安全配慮義務違反として不法行為を構成するのは、退職を迫った事実のみであるとした。

3 ③について

 ⑴ Y1の安全配慮義務違反による本件発症に対する損害

 ア 賃金の減額分

 まず、昇給が遅れた分の損害について、本件発症によりXの仕事量等が減少したこと、評価についてもうつ病にならなかった場合に比して低くなっていることは推認できる。さらに、本件発症に業務起因性は認められることは上記のとおりである。他方で、Y1の従業員においては必ずしも定期昇給していたわけではなく、特に、Xが仕事を効率的にこなすタイプではなかったことからすると、Y1の昇給表のとおりに昇給できていたかについては疑問が残る。

 そのため、この点についての損害額については、弁論の全趣旨より、1000万円と認めるのが相当である。

 次に、給与の減少分について、Xは、上記のように復職してから給与を半額に減額されている。この減額は、業務起因性を有する本件発症によりXの勤務時間が減少したことによるから、損害となる。

 もっとも、Xは、労災認定を受けた結果、休業補償金、傷病手当及び休業給付金を受領しており、これらを控除すると、この点に関する損害額は、2126万9283円となる。

 なお、Xが本件発症後、症状は、軽減と悪化を繰り返しながら継続していることが認められるため、Xの業務が通常に戻った平成21年以降も因果関係が認められる。

 イ その他

 労災対象外の治療費等として、30万1620円が認められるが、症状固定していない現段階においては、Xの後遺障害を前提とした逸失利益を認定することはできない。

 ⑵ Xの精神的苦痛に対する損害

 上記のように、Y1に認められる安全配慮義務違反は、不当に退職を迫った点のみであるから、Yの安全配慮義務違反による精神的苦痛に対する慰謝料としては、30万円が相当である。

 ⑶ 弁護士費用

 上記それぞれについて、1割を損害と認めるのが相当である。

第4 結語

 以上のように、Xの請求は、3472万7903円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める限度においては理由がある。

〈参考法令〉

・民事訴訟法248条(損害額の認定)
 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

労働経済判例速報2019.11.20

【退職合意と解雇の有効性を否定したが、再就職から半年乃至1年後に黙示の退職合意の成立が認められた例】⇒東京地裁平成31年4月25日判決〈新日本建設運輸事件〉

第1 事案の概要

 被告(以下、「Y」という。)との間で期間の定めのない労働契約を締結していた原告ら(以下、「Xら」という。)がYにより平成28年6月25日に、普通解雇された(以下、「本件解雇」という。)。本件解雇までに、Xらは、同年3月から賃金増額を求めてYと交渉していたところ、Xらが他の従業員にも交渉に参加するよう求めているという事実を知り、Xらに対して不信感を強め、同年5月26日、Y代表者がXらに対し、本件解雇通知書を突きつけ、本件解雇通知書をとるか、これまでの行動を謝罪するとともに交渉を白紙に戻すかの選択を迫ったため、Xらが本件解雇通知書をとってその場を立ち去ったという経緯がある。なお、Xらは、最終勤務日の2日後である同年6月22日、本件解雇が無効である旨を主張する通知書をY宛に送付している。

 このような経緯を経て、Xらは、本件解雇が無効である旨主張し、被告に対し、労働契約上の地権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、バックペイ等の支払いを求めて提訴した。

第2 主な争点

 本件における主な争点としては、①XらとYとの間で、退職に関する合意が存在したか、②本件解雇が有効であるかどうか、③本件解雇後のXらの就労意思の有無及び未払い賃金額等である。

第3 裁判所の判断

1 退職に関する合意の有無

 Yは、平成28年5月26日のXらとYのやりとりからすると、両者に退職の合意が存在すると主張する。しかしながら、Xらが本件解雇通知書を手に取りその場を立ち去ったのは、Yに求められた選択に反発するためであり、その後XらがY代表者に対し不当解雇である旨述べていたことからも明らかなように、XらがYに対してYを任意に退職する意思を示していたということはできない。

 他方で、Yは、本件解雇通知書を作成してXらとの直接交渉に臨んでいること、その際、Xらに対して上記のような選択を迫っていることからすると、Xらが本件解雇通知書を手に取り、その場を立ち去った時点において、Xらに対して確定的な解雇の意思表示をしたと認めるのが相当である。

 もっとも、Xらが、本件解雇が無効である旨を主張する通知書をYに送付していることからすると、Yが確定的な解雇の意思表示をし、Xらが労働契約の継続を求めず、私物を持ち帰った等の事情があったとしても、Yを任意に退職する意思を有していたとは言えないため、この点に関するYの主張は認められないため、退職に関する合意は認められない。

2 本件解雇の有効性

 Yは、本件におけるXの行動から、本件解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たらず、有効であると主張する。しかし、Xらが他の従業員に対して行った交渉への勧誘は、当該従業員の業務に具体的な支障をきたすようなものではなく、当該従業員においてちょっと嫌だった程度のものである。また、確かに、Xらの行為に従業員としての協調性に欠ける点があったとしてもそのことから直ちに解雇することには無理がある。さらに、Xらが無線を通してYに対する不満等を述べることがあったとしても、これに対して他の従業員から苦情があった事実やYが注意等したという事実も認められないことからすると、この事実は大きな問題とはとらえられていなかったといえる。これらに加え、YがXらに対して、Xらの業務に問題があるとする点について、注意・指導したこともなかったことからすると、そのことをもって解雇の合理的理由とすることは困難である。

 以上からすると、本件解雇は、客観的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないというべきであるから、解雇権を濫用したものとして無効である(労働契約法16条)。

3 本件解雇後のXらの就労意思の有無及び未払い賃金額

 ⑴ Xらの就労意思

 本件でXらは、本件解雇からほとんど間を置かずに同業他社に就職するなどしてこれまで通りトラック運転手として稼働し、概ね本件解雇前においてYから得ていた賃金と同水準ないしより高い水準の賃金を得ていた。このことと、本件解雇に至る経緯を合わせて検討すると、遅くとも同業他社に就職して約1年ないし約1年半が経過した時点で、Xらには、客観的に見てYにおける就労意思を喪失するとともに、Yとの間でXらがYを退職することについて黙示の合意が成立したと認めるのが相当である。

 ⑵ 未払い賃金額

 そうだとすると、Xらは、本件解雇後Yにおける就労意思を喪失するまでの間、Yの責めに帰すべき事由によって当該労働契約に基づく債務を履行することができなくなっていたということができるから、Yは同期間についてXらに対して賃金の支払い義務を負う(民法536条2項前段)。

 もっとも、使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中にほかの職に就いて収入等の中間利益を得たときは、使用者は、当該労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、中間利益の額を賃金額から控除することができるが、上記賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁じられていると解すべきであるから、使用者が労働者に対して負う解雇期間中賃金支払い債務の額のうち平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解するのが相当である(参考判例①,②)

第4 結語

 以上からすると、上記期間の未払い賃金から、Xらが同業他社から得ていた賃金のうち時期的に対応する賃金を中間利益として控除した限度でXらの請求には理由がある。

〈参考判例〉

①最高裁昭和37年7月20日判決(民集16巻8号1656頁「米軍山田部隊事件」)
②最高裁昭和62年4月2日判決(民集150号527頁「あけぼのタクシー事件」)

〈参考法令〉

 ・労働契約法16条(解雇)
  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
 ・民法536条 2項(債務者の危険負担等)
 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、事故の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
 ・労働基準法12条
1 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額を言う。ただし、その金額は、次の各号の一によって計算した金額を下ってはならない。
  一 賃金が、労働した日若しくは時間によって算定され、又は出来高払い制その他の請負制によって定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十
  二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額を前号の金額の合算額
・労働基準法26条(休業手当)
 使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当てを支払わなければならない。

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