2022年12月1日、代表弁護士・下西祥平が広島県経営者協会様主催第3回経営労働法研究会において判例報告をしました。同研究会は、経営法曹会議所属の弁護士が、年に4回、経営者協会所属会員向けに、労働経済判例速報掲載の最新判例をご紹介し、実務の参考にして頂くための勉強会です。
今回、取り上げたのは、①NECソリューションイノベータ事件(大阪地裁(令和3年11月29日)判決、労経速2474号1頁)②山形大学事件(最高裁判所(令和4年3月18日)判決・労経速2479号1頁)③フジ住宅事件(大阪高裁(令和3年11月18日)判決・労経速2481号1頁)です。テーマの選定理由としては以下の通りです。
①NECソリューションイノベータ―事件
配置転換については、テレワークを含め多様な働き方が生まれ、業務上の必要性について慎重な検討がされる余地が増えており、東亜ペイント事件(最高裁昭和61年7月14日判決)を踏まえて、現代において同様な配転命令の権利濫用該当性が判断されるかを知って頂くこと。どの程度丁寧に対応し、従業員とのやり取りの記録を証明できれば、権利濫用性が否定されるかを知るための事例として選定しました。
②山形大学事件
労働契約法7条の不当労働行為のうち、最も議論になるのが団体交渉拒否(同条2号)であり、どのような場合にまで企業は団体交渉に応諾する義務があるのかを知って頂くために選定しました。特に、近時は団体交渉を巡ってウーバーイーツに登録する配達員の労働者性についての東京都労働委員会の決定が出たところであり、団体交渉については議論の熱が高まっているところです。
③フジ住宅事件
職場環境配慮義務の一環として、従業員に対し、少数派差別や侮蔑に当たる社会的相当性を欠くような言動は、違法となる余地があることを社会的ニュースになった事例から考えるために選定しました。また、提訴を受けた会社として対象従業員に対して振舞うべき対応や法的義務についての言及もあり、重要な意義を有すると考えました。