2024年12月4日、代表弁護士・下西祥平が広島県経営者協会様主催第3回経営労働法研究会において判例報告をしました。
同研究会は、経営法曹会議所属の弁護士が、年に4回、経営者協会所属会員向けに、労働経済判例速報掲載の最新判例をご紹介し、実務の参考にして頂くための勉強会です。
令和2年より担当させていただき、今年が4回目の担当となりました。
今回、取り上げたのは、
第1 各種手当がいわゆる出来高払制賃金には該当しないとされた例
(引越運送事業A社事件・東京地裁立川支部(令和5年8月9日)判決・労経速2/10 通算2536号)
第2 退職後1年間の競業避止義務違反を理由とした退職金減額が有効とされた例
(日本産業パートナーズ事件・東京高裁(令和5年11月30日)判決・労経速4/30通算2543号)
第3 コロナ禍での整理解雇につき、解雇回避努力が不十分とはいえないとされた例
(カーニバル・ジャパン事件・東京地判(令和5年5月29日)判決・労経速5/20通算2545号)
です。
テーマの選定理由としては以下の通りです。
①引越運送事業A社事件
一部の弁護士及び社労士により運送業による完全歩合給(出来高払い制)による運送業の残業代対策が推奨されていますが、出来高払い制賃金とはそもそもどのような制度で、どのような場合に「出来高払い」といえるのかを示した重要な裁判例であり、ご紹介をしました。あわせて争点となった変形労働時間制の要件と運用時の注意点についても解説しました。
②日本産業パートナーズ事件
転職市場が開放された平成から令和にかけての日本の労働環境の変化に伴い、近時退職した従業員の競業避止義務違反のご相談を数多く受け、かつ紛争事件も対応しています。本事件は競業避止義務違反があったときの退職金不支給規定の有効性について、紛争予防の観点からも非常に参考となる事例であったため、ご紹介しました。
③カーニバル・ジャパン事件
新型コロナウイルスの集団感染が起きたことで有名になった「ダイヤモンドプリンセス号」の運営元であるカーニバル社の日本法人において実施された整理解雇の事例を参考にして、整理解雇を進めるうえでの検討のポイント(整理解雇の4要素に即した留意点)と、具体的な人事の手続きについて参考なる裁判例としてご紹介しました。
主催:広島県経営者協会
http://www.hiroshima-keikyo.jp/seminar.html