労働判例㉘(社会福祉法人仙台市社会福祉協議会事件、バンダイ事件、ドリームスタイラー事件)

労働経済判例速報 2020.10.10

【有期雇用契約の更新上限回数を超えての更新に合理的期待が認められないとの判断された例】⇒仙台地裁令和2年6月19日判決〈社会福祉法人仙台市社会福祉協議会事件〉

第1 事案の概要及び主な争点

 被告(以下「Y」という)は、各種福祉分野に及び多数の施設を運営する社会福祉法人であり、原告(以下「X」という)は、Yとの間で、平成25年4月1日、雇用期間1年とし、最長4回まで更新可、基本給日額7000円といった内容で雇用契約を締結した。その後、Xは、本件雇用契約を4回更新した後、平成30年4月1日をもって雇用契約の期間満了により雇止めされた。これに対して、Xは、本件は労働契約法19条2号に該当する事由があり、本件雇用契約は従前の内容で更新されるから、Yが行った雇止めは違法であり無効であると主張して、雇用契約上の地位にあることの確認等を求めた。主な争点は、本件契約が更新されると期待することについて合理的な理由が存在したかである。

第2 裁判所の判断

1 本件雇用契約に係る募集要項には、「1年間の有期雇用契約。勤務成績により更新は4回まで可能。」と明記されており、Xは、本件募集要項の内容を確認し本件募集要項に基づいて応募をしている。その後、Xは、採用面接の際、課長から雇用期間が1年であること、契約更新の回数が4回までであり、5年間が限度であるとの説明を受けたうえで、更新期間は「指定管理期間終了まで(最長4回まで更新可)」と記載された雇用契約書に署名押印している。さらに、Xは本件契約を4回更新しているが更新のたびに「最長4回まで更新可能」と記載された雇用契約書に署名押印していたうえ、4回目の更新時には、「契約を更新する可能性 無し」等と記載された雇用契約書に署名押印している。

2 以上の事実からすると、XはYに採用される当初から雇用契約の更新 回数が最長4回までであり、雇用期間が最大5年間であることを認識して、本件契約を締結していたものであり、その後の本件契約の更新についても、更新ごとに雇用契約書が作成され、そのたびに更新回数の最長が4回までであることについて明記され、最終更新年度である平成29年度には雇用契約の更新を行わない旨が明記されていたことからすると、特段の事情がない限り、Xにおいて雇用契約の更新4回、雇用期間5年を超えてさらに本件雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めることはできない。そして本件においては上記特段の事情は存在しない。

3 以上より、Xの請求には理由がないため棄却する。

〈参考法令〉

・労働契約法19条2号

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申し込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

1 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

2 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること

【担当業務の移管によりなされた雇止めが有効と判断された例】⇒東京地裁令和2年3月6日判決〈バンダイ事件〉

第1 事案の概要及び主な争点

 原告(以下「X」という)は、玩具・遊戯用具等の製造販売業を営む被告(以下「Y」という)との間で、平成18年5月22日、有期雇用契約を締結し、本件雇用契約は、平成30年3月31日に雇止めとされるまで合計14回更新された。

 Xは、本件雇用契約は労働契約法19条1号ないし2号に該当し、本件雇止めは、客観的合理的理由を欠き社会通念上相当であると認められず、本件雇用契約は更新されたと主張し、労働契約に基づき労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めて訴えを提起した。

 主な争点は、本件雇用契約が労働契約法19条各号に該当するか、該当する場合、本件雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないかである。

第2 裁判所の判断

1 本件雇用契約は、約11年10か月の間、合計14回にわたり更新されており、労働契約法19条1号の適用上、過去に反復して更新されたことがあるものということはできる。しかし、各更新の際には、所要の変更事項については変更した上で雇用期間の定め及び期間満了時点での諸事情を考慮して更新することがあるなどと明示された契約書が作成されてきており、更新手続きは形骸化しているとはいえない。そうすると、本件雇用契約を終了させることが期間の定めのない契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められるとまではいえず、同号に該当する事由があるとはいえない。

 労働契約法19条2号の該当性については、労働契約の更新の回数や雇用の通算期間、雇用期間管理の状況のほか、当該雇用の臨時性・常用性、それまでの契約更新の具体的経緯、雇用継続の期待を持たせる使用者の言動などの諸事情を客観的に見たうえで、当該有期労働契約の契約期間満了時においてどのような内容の期待を持つのが通常であるのかを具体的に認定・判断する必要がある。本件においてXは、雇用時の臨時性やその後の環境変化によってXの担当業務が減少しX雇用の臨時性が前景化する中、その労働条件に内容や分量が見合うような担当業務をY内に確保することができれば本件雇用契約は更新されるという内容の期待を有していたといえ、このような期待を有することについては、合理的な理由があるといえる。そのため、労働契約法19条2号に該当する事由がある。そこで、本件雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないか否かについて以下で検討する。

2 本件雇止めは、YにおいてXの担当できる業務がなくなるという経営上の必要によるものであり、Xに何らかの帰責事由があることを直接の理由としてされたものではない。そうすると、Xの合理的期待を踏まえた上で、本件雇止めの客観的合理的理由及び社会的相当性の有無については、本件雇止めの必要性、雇止めの回避努力及び手続の相当性に関する具体的事情を総合的に考慮した上で判断するのが相当である

 Xの担当業務は、他事業部に完全移管されたため、平成30年4月からはXが担当する業務はなくなっていたといえる。そして、上記完全移管は業務の効率性という観点から合理的必要性があったことからすると、本件雇止めの必要性は認められる。また、Yは、平成30年4月1日以降、Xの主な担当業務がなくなることを踏まえ、X自身の業務処理能力の向上を求めたり異動や労働条件の変更を提案する等、Xの雇用維持のための有意な措置を複数とったということができる。それにもかかわらず、Xは、Yから提示された措置について真摯に向き合わなかったのであって、そのような状況下でYにさらなる措置を講ずべきであったとはいえず、Yは雇止めの回避努力を尽くしたといえる。そして、YはXに対してその担当業務減少の状況を説明するなどしてXの意向を確認している上、Xの雇用維持のために複数の措置に取り組んできている。さらに、平成29年11月30日にも改めて状況を説明したうえでXの雇用維持のための措置を複数提示してXに検討の機会を与えた経過が存在する、そうすると、YのXに対する本件雇止めの説明が不十分とみることはできず、本件雇止めの手続きの相当性を肯認することができる

3 以上より、本件雇用契約は、労働契約法19条2号に該当するものの、本件雇止めが客観的合理的理由を欠き社会通念上相当であるとは認められないとはいえないから、平成30年3月31日をもって本件雇用契約は更新されず終了しているため、Xの請求には理由がない。

【原告の退職が実質的には被告による解雇に当たるとの主張を否定し、退職が有効と判断された例】⇒東京地裁令和2年3月23日判決〈ドリームスタイラー事件〉

第1 事案の概要及び主な争点

 原告(以下「X」という)は、平成29年4月1日に飲食店の運営等を目的とする株式会社である被告(以下「Y」という)との間で期間の定めのない労働契約を締結し、Yの業務に従事していたが、平成30年3月に妊娠が判明し、同年4月末日をもってYを退職した。このことについて、Xは、Yが時短勤務を希望していたXに対して、月220時間の勤務時間を守ることができないのであれば正社員としての雇用を継続することができない旨伝え、退職を決断せざるを得なくさせたのであり、実質的にXを解雇したものということができ、当該解雇は雇用の分野における男女雇用機会均等法9条4項により無効且つ違法であると主張して、Yに対して本件労働契約に基づき労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた。主な争点は、Xの退職が実質的に見てYによる解雇といえるかである。

第2 裁判所の判断

 YはXに対して、勤務場所を座って待機する時間が多く取れる店舗に変更すること及び勤務時間を早朝から夕方までの時間から午前12時から午後7時30分までとすることを提案していることから、YがXに対して月220時間の勤務時間を守ることができないのであれば正社員としての雇用を継続することができない旨を伝えていたと認めることはできず、したがって、XがYに対して、月220時間勤務を約束することができなかったため、退職を決断せざるを得なくなったという事情があったということはできない。

 また、Yは、Xの妊娠が判明した後、Xの体調を気遣い、Xの通院や体調不良による遅刻、早退及び欠勤をすべて承認するとともに、別店舗において午前10時から午後4時または午後5時まで勤務したいというXの希望には直ちに応じることができなかったものの、Xに対し、従前の勤務より業務量及び勤務時間の両面において相当に負担が軽減される本件提案をしているのであり、これらのYの対応が労働基準法65条3項に反し、違法であるということはできない。

 さらに、本件提案の中でも、Xの体調次第では人員の足りている午後3時までは連絡すれば出勤しなくてもよいとの柔軟な対応がなされていたことからすると、本件提案自体、今後の状況の変化に関わらず一切の変更の余地のない最終的かつ確定的なものではなく、Yは、今後のXの勤務について、Xの体調やYの人員体制等を踏まえた調整を続けていく意向を有していたことがうかがわれる。なお、Xが勤務していた店舗の店長は、Xに対し、自分の好きな場所で好きな時間帯に働きたいというのであれば、アルバイト従業員の働き方と同じであり、Xの希望次第では契約社員やアルバイトへの雇用形態の変更を検討することも可能である旨を伝えていたものの、上記のYの対応を踏まえれば、一つの選択肢を示したに過ぎないことは明らかであり、このことをもって、雇用形態の変更を強いたということはできない。

3 以上からすると、Xの退職が実質的に見てYによる解雇に該当すると認めることはできない。したがって、Xの請求には理由がない。

〈参考法令〉

・労働基準法65条3項

  使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 9条4項

 妊娠中の女性労働や及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りではない。