解決事例の報告~飲食店無断キャンセル~
弊事務所で受任し、先日終結した飲食店無断キャンセル事件の概要と解決の流れ、予防策についてご紹介いたします。
【事件の概要】
昨年の12月某日、ある飲食店に予約の電話が2件入りました。内容としては、①翌日午後7時から2時間、40名分の座席予約と、②翌日午後9時から2時間、35名分の座席予約でした。予約を受けたお店は当然、午後7時から40名分の座席を、午後9時からは35名分の座席を空け、予約者の到着を待っていました。しかし、当日の予約時間になっても、誰も現れません。①の予約者には電話が繋がりましたが、「遅れる」と言うだけで結局来店せず、②の予約者には電話が繋がりません。お店としては、その間他の客を入れるわけにもいかないので、結局4時間分の売上を失ってしまいました。
【解決の流れ】
お店には携帯電話番号とカタカナで聞き取った氏名(姓字)の情報しかないので、そこから予約者の情報を探っていくことになります。弁護士会照会により、携帯電話会社に契約者情報の照会をし、会社が把握している氏名及び住所の情報を取得しました。それを元に住民票を取得し、現在の住所に、損害が発生したことと、その損害金の請求を記した内容証明郵便を送付しました。①の予約者はすぐに支払ったので、解決となりましたが、②の予約者は、内容証明郵便も無視したため、訴訟をすることとなりました。②の予約者は裁判所からの呼び出しも無視したので、当方の主張が全面的に認められました。判決には仮執行宣言が付けられていたので強制執行ができます。もっとも依然として名前と住所以外の情報はわからず、勤務先すらわからないので、広島県内の銀行数行に当たりを付けて、預貯金がないかについての情報を開示してもらいました。そのうちの一行に預金債権があったので、その債権に対し強制執行の手続を進めていき、銀行口座を差し押さえました。このタイミングでようやく②の予約者から、銀行口座が凍結されて生活が出来ない旨の連絡がありました。当方としては毅然として対応し、全額回収方針であることを伝えて、予定どおり当該銀行口座から損害金を取り立てて、事件は終了となりました。
【予防策】
先の見えないコロナ禍を乗り越えてきた飲食店に対する無断キャンセルは、全く身勝手で卑劣な行為であり、許されるものではありません。もっとも、一般に弁護士に解決を依頼した場合、費用倒れとなるため、結局お店側が泣き寝入りしてしまうケースがほとんどです。結局何も請求できないと高を括って、安易な気持ちで無断キャンセルをしているのだろうと思われます。本件はコロナ禍で苦しんだ飲食店様からのご依頼だったので、弊事務所の利益を度外視し、徹底的に責任追及することとした次第です。無断キャンセルが発生した後に責任追及する場合の多くは、前述のような経過を辿ると思われますが、これでは費用も時間もかかってしまいます。あくまでも最善手は無断キャンセルをさせないようにすることであり、紛争を予防することです。残念ながら悪意を持った予約者もいるので完璧な予防手段はありませんが、予防策としては一般に以下のようなものが考えられます。
⑴ まずは、予約サイト等にキャンセルポリシーを明示しておくことです。「当日キャンセルの場合、100%のキャンセル料が発生します。何の連絡もなく、予約時間から30分経過した場合、自動的にキャンセルとなります。キャンセル料は以下のとおりです。」などと明記します。キャンセル料は平均客単価×人数とすることが考えられます。
⑵ 次に、SMSでリマインドを行うことも考えられます。悪意のないものについては前日や当日にリマインドをすることで無断キャンセルを防げます。
⑶ 逆説的ですが、キャンセルの連絡を容易なものにすることも考えられます。無断キャンセルの場合、予約時間がまるまる損失になりますが、ドタキャンであれば当日客が案内できます。電話以外で心理的障壁なくキャンセルの連絡が出来る仕組みがあれば、無断キャンセルをドタキャンに出来るかもしれません。この場合には上記のようなキャンセルポリシーは明記しておく必要があるでしょう。
以上の予防策をとっても、無断キャンセルを完全に防ぐことはできません。もしかしたら、無断キャンセル事例には、一つ一つ徹底的に対抗措置をとる姿勢を見せるのが、将来の一番の予防策かもしれません。弊事務所としてもこのような悪質事例にはしっかりと責任追及したいと思いますので、まずはご相談ください。