法務省の法制審議会・民事執行法部会は、2018年8月31日の第23回会議で「民事執行法制の見直しに関する要綱案」を決定しました。今まで機能不全に陥り、逃げ得を許していた民事執行制度の改善案として、期待できる内容も盛り込まれているので、ご紹介させていただきます。裁判所を介して強制執行による債権回収がより一層確実なものとなり、債務から逃れることを許さない断固たる制度の構築を切望します(ちなみに、外国では確定判決を受けながら支払いをしていない債務者はブラックリストに載り、国内からの出国制限がかけられたり、氏名がインターネットで公開されるところもあります。)。
法制審議会・民事執行部会とは
2016年11月以降、①債務者財産の開示制度の実効性の向上、②不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策、③子の引渡しの強制執行に関する規定の明確化について審議を重ねている。
民事執行法制の見直しに関する要綱案(本文)
債務者財産の開示制度の実効性の向上
現行の財産開示手続の申立てに必要な債務名義の種類が拡大され、執行証書などに基づく申立てが可能となる。
また、第三者から債務者財産情報を得る制度が新設され、銀行などから預貯金債権等、振替機関などから振替社債等に関する情報が、いずれも財産開示手続を経ずに入手可能となる。
さらに、登記所から不動産情報、市町村や日本年金機構などからは給与債権情報も入手できるようになるが、その申立てには財産開示手続の選考が必要であり、給与債権情報の申立権者は、養育費等や人の生命身体に係る損害賠償請求権の債権者に限られる。
不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策
不動産の買受申出人に暴力団員などでない旨の陳述が義務付けられ、虚偽の陳述には罰則が設けられる。裁判所は警察に対し、最高価買受申出人や自己の計算で最高価買受申出をさせた者が暴力団員などに該当するか否かの調査嘱託を行い、暴力団員などと認められるときは売却不許可決定をすることになる。
子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化
執行方法として、裁判所の決定で執行官に引渡しを実施させる方法と間接強制の方法が定められる。
前者は、間接強制を先行させる場合のほか、間接強制の実施では奏功の見込みがあると認められない場合、子の急迫の危険防止に必要な場合に申立てが可能となる。
手続面では、実施決定に当たり、原則として債務者に対する審尋が行われる。執行官は相当な場合に債務者の非住居等でも執行でき、子と債務者が共にいない場合でも執行が可能であるが、その場合には債権者の出頭が必要となる。
また、これらの内容を踏まえ、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(ハーグ条約実施法)も同趣旨の内容に改正される予定である。